味噌作り指導者養成講座
(第1回)「大豆の茹で方」
大豆は適正に茹でないと発酵不良や味噌の粘りの原因となります。 感覚的には親指と人差し指でつまんで「グニュ」となる感覚です。 「パカッ」と2つに割れるようでは茹で不足で、この場合タンパク質の分解が不十分となり発酵不足になります。
その「グニュ」という感覚を正確に計測する方法は、
- ①はかりの上に茹でた大豆を一粒置く。
- ②人差し指で上から押す
- ③グニュとつぶれるときの重量を見て400~600gが適正範囲です。
低いと茹ですぎ、粘りの原因となります。高いと茹で不足、発酵不良や味噌のざらつきの原因となります。 しかも一粒だけではだめで10粒試してみてください。茹でムラや大豆の硬さにバラつきがあるため、そのうち6~7割が適正範囲なら合格とします。 「グニュ」の感覚をつかむまでは、はかりを使うことをおすすめします。 大豆の処理は味噌の出来を直接左右する最重要ポイントの一つです。
(第2回)「納豆臭い味噌?~擂砕(らいさい)の重要性」
「納豆臭い味噌になった、どうしたらよいか」との問い合わせが年に1~2件ございます。これには複数の原因があります。 現物を送付いただき拝見しますと、共通しているのは大豆の粒やら破片やらが異常に多く、大豆がペースト状になってないという共通点があります。 大豆を潰すことを専門的には「擂砕(らいさい)」といいます。大豆を粒や破片のままで味噌を仕込むと、その部分だけが塩分が低く、また水分も多いため納豆菌が繁殖しやすい状況となります。まさに納豆を作ってる状況です。 また上記との複合あるいは単独原因として大豆を蒸煮・冷却後すぐに仕込まず、仕込前にすでに納豆菌に大豆が侵されているというケースもございます。 あるいは煮た大豆の冷却温度が高すぎるため、ひいては仕込直後の味噌の温度が高くなり、仕込初期に納豆菌が繁殖するという場合もあります。 昔から「一焚き、二麹、三仕込」といわれるように大豆の処理は味噌作りで最も大切です。
まとめ
大豆は
- ・よく煮て(第一回参照)
- ・よく冷やし(人肌以下、できれば特に夏場は30℃程度、やや味噌が柔らかくなりますが流水冷却でも構いません。)
- ・しっかり潰し(粒をなるべく残さない)
- ・すぐ仕込む(潰したらすぐ仕込む。翌日なんてもってのほかです!)
(第3回)麹1:大豆1の配合はカビが生えやすい?~配合の基礎(1)麹歩合
前回、前々回と大豆の煮方を詳しく勉強しましたが、今回より数回にわたり、材料(麹、煮大豆、塩、種水)の配合についてお話します。今回は麹の配合量=「麹歩合」についてのお話。 スーパーで売ってる乾燥麹やネットでの他社さんの味噌作りレシピをみると「麹1:大豆1」の配合が主流のようです。これを専門用語では「10分麹」といいます。 なぜ池田屋の配合は20分麹「麹2:大豆1」になっているのか?九州の味噌がそもそも20分麹が伝統的に多いという理由のほかにご家庭での手作り時「カビが生えにくい」からです。 本当かどうか実験してみました。麹歩合を変え、ほかの条件(塩分、水分、熟成温度)をほぼ同一にして、どれだけカビが生えるかという実験です。(今回の麹は乾燥麹で比較しています。)また表面にはアルコール等カビ対策はせず、5か月間完全に放置してみました。その結果が下記画像です。↓
(会員限定のため、ログイン後ご覧いただけます。※1週間程度で削除します。(削除済です。))
(左)麹2:大豆1
ポツポツとある程度です。
(中)麹1:大豆1
全面にビッシリ、タップリと生えています。
(右)麹1:大豆1(他社A社乾燥麹)
今回はスーパーで買った他社製乾燥麹との比較もしてみました。配合は裏面の作り方のとおりです。やはりタップリ生えてます。緑系カビも混ざっています。 その他、麹が多いと「熟成が早く低塩で仕込むことができる。」等のメリットがあります。麹が多いと酸敗(すっぱくなる)リスクが軽減し、その分塩分を少なくできるという訳です。塩分が少ないと多麹の酵素量が多いことと相まって熟成が速くなります。 麹歩合はもともと地域により異なり、例えば5歩麹(麹0.5:大豆1)などは長期熟成で塩分が高めの赤味噌、寒冷地方に多いような気がします。
(第4回)気になる塩分~配合の基礎(2)塩分
前回の麹の配合に続いて今回は塩の量のお話。すこしむずかしい話ですが避けては通れません。 市販の味噌に「塩分控えめ」とか「食塩相当量11g」とか書いてありますが、そもそも味噌の塩分はどうやって計算するのでしょうか。
塩の重量÷味噌の重量
簡単にいうとこれだけです。しかし塩はすべてが塩分ではありません。ミネラルが多かったり水分が多かったりする塩もあるため、”真の”塩分を計算する必要があります。 それを加味して上の式を少し詳しくると、
(塩の重量×塩化ナトリウムの含有率)÷(麹+煮大豆+塩+種水)の重量
「塩化ナトリウムの含有率」というのは塩の栄養成分表に「食塩相当量」または「塩化ナトリウム」と書いてあるものの率です。記載のない場合は「ナトリウム」×2.54倍が概ね100g当たりの塩化ナトリウム量となります。塩化ナトリウムとナトリウムは違うということに注意してください。 例えば「赤穂の天塩]の場合、塩化ナトリウム92gと書いてあるのでこの場合含有率はそのまま92%となります。「天草の塩」の場合「ナトリウム 34.5g」としか書いてありません。そこで2.54を掛けてやると概ね87%ということになります。 これは自分の好きな塩を使用したい場合に使えます。弊社配合は全て塩分97%の塩を使う場合で設定しています。90%台までならそのままで良いですが、それ以下の場合増量をお勧めしています。例えば83%の自然塩が使いたいといった場合、アバウトで結構なので塩の量を10%ほど増量します。(ただし、80%以下の塩の使用は基本的にお勧めしません。上記補正計算がうまくいかない場合があります。) また通常の食品の栄養成分表示で「ナトリウム」としか記載がなく、塩分計算をしたい場合にも使えます。一日の塩分を10g以下に抑えたいといった場合の目安となります。 実は塩の配合でもう一つ重要な塩分指標があります。それを「対水食塩濃度」といいます。簡単にいうと味噌の水分に対する塩分、下記の式となります。
味噌の塩分÷(味噌の水分+味噌の塩分)
となりこの値が高すぎると(種水か少なく塩が多い)、発酵がうまく行われず低すぎると(種水が多く塩が少ない)酸味がでるといわれています。これは前回の麹歩合によっても異なり、麹が多いと「対水食塩濃度」が低い場合でもある程度許容する(酸っぱくなりにくい)と考えてます。前回の多麹味噌にカビが生えにくい話同様、麹の抗菌作用になんらかの秘密があるのではないかと思ってます。 経験上、「種水が多く(=やわらかい味噌)、塩分が少ない」より「種水が少なく(=固い味噌)、塩分が多い」ほうが、致命的な失敗になりやすいような気がします。 味噌全体に対する塩の量だけでなく、水分とのバランスも確認して配合計算することが大切ということです。
(第5回)配合の基礎(3)水分
麹、塩とお話してきましたが、配合の最後は水分についてのお話です。 人間の体は60%以上が水分でできているそうです。 味噌は米味噌の場合、45%程度が水分です。人間の体と同じように味噌 の発酵にとっても、水はなくてはならないものです。 水分の多い少ないは、単に出来上りの味噌の硬さ軟さに関係するだけだと思われがちですがそうではありません。水は発酵にとって重要な役割をしていす。 味噌は麹菌に含まれる多種の酵素の働きにより、味噌になるのですが、酵素が働くためには水が不可欠となります。その量が少ないと発酵に問題が生じます。(酵素は大豆のタンパク質をアミノ酸にしたり、でんぷんを糖にしたり、繊維や脂肪を分解したりと様々な役割を果たしています。少し前、流行った塩麹が、旨みをだしたり、甘くしたり、お肉を柔らかくしたりするのはこの酵素の働きを利用しています。) また味噌の香りなどに関係する酵母や乳酸菌の働きにも水の量により 影響を受けます。 このように大切な水ですが、ここで難しいのが大豆の煮え方により大 きな影響を受ける点です。大豆は農作物ゆえに収穫方法、大豆の品種や 収穫後の時間・管理等により煮え方に差が出ます。ご家庭での味噌作り において、レシピどおりに種水を入れても毎回味噌の硬さや味に違いが 出るのは、この影響が大きいかと思います。どうしたら安定した味噌が つくれるのでしょうか。 弊社レシピにおいて「(米味噌の場合)大豆は基準2.2倍、500gの大 豆を1,100gに煮た場合、種水(大豆の煮汁)は240㏄いれます。」と教 えていますが、このとき
問題①
2倍(1,000g)にしかならなかった場合、種水の量はいくらでしょう?
(式)
1,100g(基準の煮大豆量)-1,000g(2倍にしかならなかった煮大豆量)
=100g(足りない水分)
240g(基準の種水)+100g(足りない水分を補充)=340g
(答え)
種水は340㏄
問題②
逆に2.4倍(1,200g)と多く煮えた場合、種水の量はいくらでしょう?
(式)
1,200g(2.4倍にもなった煮大豆量)-1,100g(基準の煮大豆量)=100g( 多すぎる水分)
240g(基準の種水)-100g(多すぎる水分を減らす)=140g
(答え)
種水は140㏄
(※)大豆の重量は煮て人肌以下に冷やした後の重量で計算してください。アツアツの大豆と冷却後の大豆では蒸発により相当差が出ます。上記のように安定した品質の味噌作りには種水の調整が必要となります。 また、味噌づくりは、もし水の入れ間違いがあっても水分が少ないより多い方が失敗する可能性が少ないような気がします。 実際に味噌の品評会に出品する味噌は市販のものより、やや柔らかく作ります。香りや艶や照りがよくなるといわれてます。 市販の、味噌らしい硬さより「手作り味噌もやや柔らかく作るとおいしい」ということがいえるかもしれません。
(第6回)仕込に関するよくある質問(その1)
味噌作り最盛期に突入し、これから仕込という方も多いかと思いま すので今回は仕込に関して、よく寄せられる基本的な質問を次回と 2回に分けてピックアップします。
Q1.大豆を水浸してしまった、あるいは煮てしまったが麹が届かな い、また急用で仕込めなくなった。
A.水浸けの場合は、ザル等で一旦水を切って寒い(夏は冷蔵庫)と ころで保管。1~2日であれば問題ありません。表面が乾燥してい る場合もあるので念のため仕込日に1~2時間再度水浸けしてくだ さい。煮てしまった場合は、潰して予定の塩分を全て入れ、味噌を 作る時と同じ要領でムラなく塩を混ぜ込み寒い(夏は冷蔵庫)とこ ろで保管。相当期間日持ちます。
(お願い!)冬季は特に雪の影響等で宅急便によるお届けが遅延す る場合があります。必ず各材料が手元にそろってから水浸けしてく ださい。
Q2.塩を変えたい。前回と同じ分量で良いか?
A.分量計算を「講座(第四回)~気になる塩分~配合の基礎(2)塩 分」 参照してください。それでもわからない方はメールでお問い合 わせください。なお、岩塩系、特に鉄分が多い赤い塩は現在のとこ ろお勧めしません。
Q3.配合を間違った。(麹、大豆、塩、煮汁(または水))
A.(少ない場合)→正しい量との差分を計算・追加して味噌に混ぜな おし。仕込後1週間程度であれば問題ありません。
(多く入れ過ぎた場合)→塩津までご連絡ください。可能な限り修復 のためのアドバイスをします。その際各配合量が必要となります。 味噌仕込みの際は麹、大豆(できれば煮て潰した後の重量も)、塩 、煮汁の各重量を記録しておく習慣をつけましょう。トラブルの際 以外にも将来、自分だけのオリジナル配合を目指す場合の参考にも なります。
Q4.大豆を煮たが煮汁が少なくなりすぎてレシピの量に足りない。
A.差分の水を補充してください。
Q5.水は水道水でよいですか。
A.水道水で結構です。こだわれば市販のペットボトル水(軟水)は 良いですがヨーロッパ系の硬水は避けてください。煮大豆が柔らか くなりにくいといわれてます。また浄水器の場合、「アルカリ」は 避け、「浄水」で使用してください。
Q6.器具(ボウルなど)・容器(プラタルなど)手の消毒は必要で すか。
A.アルコール消毒は必要ありません。通常の食器等と同様の洗浄で 十分です。
最後に大豆の処理はとても重要なので第1回「大豆の茹で方」、第 二回「納豆臭い味噌?~擂砕(らいさい)の重要性」を再掲してお きます。
第1回「大豆の茹で方」
大豆は適正に茹でないと発酵不良や味噌の粘りの原因となります。 感覚的には親指と人差し指でつまんで「グニュ」となる感覚です。 「パカッ」と2つに割れるようでは茹で不足で、この場合タンパク質 の分解が不十分となり発酵不足になります。 その「グニュ」という感覚を正確に計測する方法は、
- ①はかりの上 に茹でた大豆を一粒置く。
- ②人差し指で上から押す
- ③グニュとつぶれるときの重量を見て400~ 600gが適正範囲です。
低いと茹ですぎ、粘りの原因となります。高いと茹で不足、発酵不 良や味噌のざらつきの原因となります。 しかも一粒だけではだめで10粒試してみてください。茹でムラや大 豆の硬さにバラつきがあるため、そのうち6~7割が適正範囲なら合 格とします。「グニュ」の感覚をつかむまでは、はかりを使うことをおすすめし ます。 大豆の処理は味噌の出来を直接左右する最重要ポイントの一つです 。
第二回「納豆臭い味噌?~擂砕(らいさい)の重要性」
「納豆臭い味噌になった、どうしたらよいか」との問い合わせが年 に1~2件ございます。これには複数の原因があります。 現物を送付いただき拝見しますと、共通しているのは大豆の粒やら 破片やらが異常に多く、大豆がペースト状になってないという共通 点があります。 大豆を潰すことを専門的には「擂砕(らいさい)」といいます。大 豆を粒や破片のままで味噌を仕込むと、その部分だけが塩分が低く 、また水分も多いため納豆菌が繁殖しやすい状況となります。まさ に納豆を作ってる状況です。 また上記との複合あるいは単独原因として大豆を蒸煮・冷却後すぐ に仕込まず、仕込前にすでに納豆菌に大豆が侵されているというケ ースもございます。 あるいは煮た大豆の冷却温度が高すぎるため、ひいては仕込直後の 味噌の温度が高くなり、仕込初期に納豆菌が繁殖するという場合も あります。 昔から「一焚き、二麹、三仕込」といわれるように大豆の処理は味 噌作りで最も大切です。
まとめ
大豆は
- ・よく煮て(第一回参照)
- ・よく冷やし(人肌以下、できれば特に夏場は30℃程度、やや味 噌が柔らかくなりますが流水冷却でも構いません。)
- ・しっかり潰し(粒をなるべく残さない)
- ・すぐ仕込む(潰したらすぐ仕込む。翌日なんてもってのほかです !)
(第6回)仕込に関するよくある質問(その2)
前回に続いて、よく寄せられる初歩的な質問をピックアップします。今 回は混合~熟成を中心にまとめました。慣れてる方も復習の意味で。
Q1.味噌団子が固すぎるような気がする。または柔らかすぎるような気 がする。
A.麦味噌→合わせ味噌→米味噌の順で硬い味噌団子になります。米味噌 の味噌団子はパサパサして固めにくい位でちょうど良く、麦味噌の場合 は、イメージとしてハンバーグを丸めるときよりやや柔らかい位のやわ らかさでちょうど良いです。合わせ味噌はその中間くらいと考えてくだ さい。イメージで判断して水の量を加減すると熟成後、柔らかすぎるあ るいは硬すぎる味噌になったり、場合によっては発酵不良になる場合が ありますので注意が必要です。また、麦味噌は仕込直後は柔らかいです が、翌日にはガチガチに固くなります。
Q2.混ぜた後”ピンクの粒”が味噌の中にたくさんあるんだけど。
A.大豆の胚芽部分ですので問題ありません。
Q3.しょうゆの実こうじをプラスしたい。しょうゆの実こうじを入れる タイミングは?
A.塩と混ぜる時です。メインの麹と同時に入れて混ぜてください。
Q4.カビが生えた。
A.スプーン等で取り除き、表面に薄く化粧塩または焼酎等のアルコー ルをスプレーしてそのまま熟成を継続してください。カビは黒系、緑系 が多く、空気に触れる部分の味噌表面に出ます。そのまま放置すると内 部に入り込みますので、早めの除去が大切です。
Q5.ラミジップ(ビニール熟成容器)の側面に白い点々がたくさんでた 。
A.アミノ酸の一種「チロシン」です。天地返し時や味噌汁にするときに 混ぜ込んで食べて構いません。熟成中温度変化が激しいと出やすくなる といわれてます。見分け方は”チョークの粉”のイメージです。たくさん 出るときは真っ白になる場合もあります。
Q6.味噌の表面にクリームがかった茶色の膜がでた。
A.産膜酵母といわれるもので、臭うと臭いです。よく桶や甕の円周にそ ってでます。混ぜ込むと香りが悪くなるので除去してください。
Q7.ビニール仕込で膨れないのは失敗?逆に膨れるのは失敗?
A.膨れは酵母発酵によってできる二酸化炭素です。酵母が活発に働くと 膨れやすくなります。「膨れる、膨れない」と「成功か失敗か」は出来の 差はあっても、直接関係ありません。ただ理想は「やや膨れてたまに空気 抜き」位がちょうど良いかと思います。また夏季等パンパンに膨れる場合 は経験上アルコール臭を伴う場合が多いですが、アルコール臭がするから といって、これも失敗ということではありません。良くできた味噌には微 量のアルコールが含まれているといわれてます。熟成初期にアルコール臭 がきつい場合でも、そのうち落ち着いてきますが風味がやや薄っぺらい味 噌になるといわれてます。
Q8.天地返しはいつするか。しなくてもよいか。
A.天地返し(混ぜなおし)は必ずしなければならないということではあり ませんが、経験上味噌の発色と香りが良くなるような気がします。熟成 がいつもと比べて遅いまたは味噌が固いと感じた場合、発酵促進のため に行うのは意味があるかと思います。 実施する時期は、味噌の種類や総仕込期間、季節により一概にはいえま せんが、人の生活できる気温で熟成させたとして熟成2週~4週位かと思 います。
(第7回)酵母と仕込時期~酒造りとの比較から考える
日本酒の仕込を厳冬期に行うのはなぜでしょうか。雑菌の繁殖を避ける、また酒母(しゅぼ~お酒の元)造りにおいて、酵母の急激な増殖をコントロールするには低温がよいというのが技術上の理由だそうです。(「技術上の」と書いたのは、歴史的にその他労働力の確保、政治的背景、米収穫期との関係など諸説あるからだそうです。) 酒造りにおいて酵母の添加はお酒ゆえにアルコールを作らなければならないため不可欠なものです。温度が高い環境での酵母の急激な増殖はアルコールを大量に作りすぎて酵母自体の働きが阻害されます。そこで増殖をコントロールするために低温の環境が必要という訳です。 反面、味噌作りにとっては酵母の添加は美味しさという観点から必ずしも必要なものではないと私は考えており、ご家庭での味噌作りでも酵母の添加などしなくても実際に美味しい味噌ができているかと思います。 では酵母を添加しない味噌には酵母が全くいないのでしょうか。いいえ、普通の環境には多くの野生酵母が存在しており、味噌仕込み時に皆さんの味噌にも自然に入ってきています。よく酒蔵や味噌蔵に住み着く”蔵酵母”といわれるものもそれに値します。また手作り味噌は仕込む人の手によって味が変わるともいわれています。(手に住み着いている常在菌に関するものではないかと想像するとあながじ都市伝説とも言えずたのしくなります。最近「常在菌は悪い菌から手を守り、洗いすぎると逆に危険」という記事をみて、現在の過度な無菌社会に対する警鐘として感心した次第です。・・脱線。) 味噌作りの教科書には味噌用に精製された酵母添加の効果として、香りをよくする、ゴク味の付与、塩なれの促進などと書かれていますが、野生酵母でもそれらを含めたなんらかの働きをしていると考えています。しかし、あくまでも味噌作りにおいての主役は麹の酵素による発酵がメインであることは間違いないかと思います。要するに酒造りにおいては酵母は主役、味噌作りにおいては脇役と考えてよさそうです。 しかし、味噌作りの最適な仕込時期を考えるうえで、この酵母の影響は非常に大きいのではないかと考えています。仕込時期の違いの顕著な例としてはビニール仕込した場合、冬仕込みはあまり袋が膨れず、夏仕込みは良く膨れる。ということがあります。これは酵母が糖を分解してできた炭酸ガスが膨れの主な原因です。このことは結果として味噌の味、風味にどのような違いをもたらすのでしょうか。果たして味噌作りは酒造りと同じく厳冬期が良いのか。厳冬期の仕込は技術上以外の単なる習慣ではないのか。厳冬期は単に発酵を遅くするだけで、逆に気温の高い夏仕込みの方がおいしくできるのではないか。 実際に夏仕込み、冬仕込み、試作して比較します。乞うご期待。
(第8回)味噌作りを教えてみよう(1)総論~「味噌作り教室のススメ」
過去7回技術的なことについてお話してきました。これから数回に わたり具体的な味噌作り教室の実施について、お話してみたいと思 います。初回は総論としての「味噌作り教室のススメ」です。 「味噌作りを教える」と一口に言っても、家族や仲間に教える、地 域のボランティアとして教える、仕事として教えるとさまざまです が、共通して考えられる味噌作り教室のよい点とはなんでしょうか 。 まず教える側の遣り甲斐という観点から考えてみましょう。味噌作 りは「The・日本文化」といってよいほど長い日本の歴史・伝統に よりそっており、それを教えることは日本人としてたいへん意義の ある活動です。次の世代に教えることはもちろん、外国人観光客が 増加傾向の現在、外国人に教えるというディープな日本体験の提供 といった可能性も今後あるかと思います。また味噌作りは、「味噌 を育てる」というように生物、発酵の神秘もあわせもっており、特 に子供たちに教える場合、食育という観点からもすぐれた活動だと いえます。自分たちが育てた大豆で味噌を作るという学習で小学校 へ指導に伺ったこともあります。 次に継続性の観点から見てみましょう。味噌作り教室は他の教室・ スクールに多くある「1回習ったら終わり」ではなく、一年の恒例 行事として定着しやすいという点があります。 なぜ、恒例化するのでしょうか。3つの理由を考えてみました。
1つめは伝統的に味噌作りが、一年の恒例行事としてなじみやすい 歴史的な背景があるということが考えられます。味噌作りの時期は その地域の農作物の収穫時期に左右されてきた面が強く、(現在で も地域によって伝統的に味噌作りの時期は異なっているようです。 熊本の弊社味噌教室の場合、最盛期は10月です。)その意味で「収 穫期」=「年に一度の行事」になりやすかったという側面があった と思います。そしてそのことを伝承により、あるいは現代の私たち のDNAが潜在的に知っているのかもしれません。
2つめは、「家庭で大豆の処理をするのはめんどくさいから教室行 って1年分まとめてつくっちゃおう」です。前の晩から大豆を洗い 、水に浸け、時間をかけて煮て、体力つかってすりつぶす。・・・
大変な作業です。教室でつくると、そのほとんどの部分が緩和され ます。弊社の場合「大豆をすりつぶす」作業は子供たちは大好きな のでさせますが、大人・高齢者向けの教室の場合、目の前でミンチ 機にかけて潰して差し上げます。
3つめは、人の輪の「きっかけ」としての味噌づくりです。近年は 比較的若い女性が女子会的に集まり、年に一度の味噌作りパーティ ーなるものもあるやに聞きます。また、帰省したお孫さんを交えて 一族親子3代で味噌作りが年末の恒例行事という話もよく聞きます 。
それぞれの状況に応じた味噌教室を開催してみてはいかがでしょう か。大袈裟に考えずとも、どなたにも教えたい人はきっといると思 います。自分一人で作るだけでは得られない新たな発見が必ずある と思います。
(第9回)味噌作りを教えてみよう(2)道具その1・大豆を煮る道具
給食施設等設備がない普通の家庭で味噌作りを教える場合、道具は 何をそろえればよいのでしょうか。 基本的に道具は「大豆を煮る」、「大豆を潰す」、「まぜる」の3工 程で必要となります。 今回は「大豆を煮る」道具を考えてみましょう。教室をするとなる と多くの豆を煮る必要があります。ほとんどの方がここで味噌教室 を躊躇することになります。大豆を煮るとき、圧力鍋と常圧で煮る 普通の鍋とのどちらを選ぶかが問題です。 まず圧力鍋について少し調べてみました。圧力鍋は一般的なもので 40分程度で煮上がる反面、1回あたりの処理量が少ない欠点がありま す。各メーカーの家庭用圧力鍋では大きいものでも生大豆で300g程 度しか煮ることができません。1kg煮るのに2時間かかってしまいます。 鍋の大きさの目安として”6L”と書いてあっても大豆はその1/20しか 処理できないことになります。先日ある圧力鍋メーカーの社長さんと お話しする機会があって、なぜ大豆はどこのメーカーの鍋も1/3の高さ までしか煮ることができないのかとお尋ねしたところ、過去圧力鍋で 大豆の爆発事故が多発し、安全基準で決まっているとのことでした。 大豆の場合皮がはがれてそれが蒸気噴出口につまりやすいことが原因 の事故だそうです。 どうしても教室で圧力鍋を使いたいのであれば業務用ということに なるかと思います。容量20リットル縦長のタイプで4万円弱で売って ます。しかしこのタイプでも1回当たり1.6kg程度の処理能力です 。2時間で5kgといったところです。 次に普通の鍋の場合はどうでしょう。この場合、時間とガス代・電 気代が問題となってきます。大豆1kgを煮るのに実際どのくらいの 時間とかかるのか実際に計測してみました。今回実験は普通の家庭 用ガスコンロ(ハイカロリーではない・中火1.68kW~強火2.97kWほ ぼ同等の火力)、で一晩水浸けした大豆(フクユタカ)1kgを30c mアルミ鍋を使用して行いました。最初の30分と水の継ぎ足し時は 強火、通常は中火で、4時間で煮あがりました。東京ガスのホームペ ージによると1時間加熱した場合、中火約21円~ 強火約37円ですの で、中火・強火を繰り返した場合4時間で約116円ということになりま す。今回は大豆1kgで試しましたが、火力には余裕があり、鍋が40cm のものであれば五徳の大きさ次第ですが3kg位は、沸騰後はほぼ同じ 所要時間でいけそうな感じでした。これについてはまた実験してご報 告します。これが可能ならば、例えば合計30kg(ラミジップ1袋2.5kg 持ち帰りなら生徒さん12人、5kgなら6人分)の味噌造りを教える場合、 大豆は6kg煮る必要があるので、鍋二つ同時に煮れば約4時間ということ になるかと思います。この4時間という時間をどう考えるかという問題に なるかと思います。前日準備ということが煮大豆は基本的にできないため、 教室開始時間をそれに合わせることになるかと思います。 また今回IHは試してみませんでしたが、鍋が大型になると厳しかと 思います。 一般家庭の環境で教室をする場合は、業務用圧力鍋か”ガスでコトコト” ということになるかと思います。
(第10回)味噌作りを教えてみよう(2)道具その2・大豆を潰す道具
給食施設等設備がない普通の家庭で味噌作りを教える場合、道具は何をそろえればよいのでしょうか。 前回の「大豆を煮る」道具に続いて今回は「大豆を潰す」道具を考えてみましょう。 味噌教室を実施する場合、この「大豆を潰す」道具は教える相手や講習時間によって変わります。 例えば講習時間が比較的長くとれ、教える相手がが子供である場合など、なるべく煮大豆の原形を見せ、子どもたちに潰させるのは良い経験になるかと思います。そのような場合は、以前メルマガでご紹介したビニール袋に煮大豆を入れ、ゴムで軽く口を止めて踏みつぶさせる方法は子供たちも喜んでやります。この時の必要な味噌を潰す道具としては、輪ゴムと大きめのビニール袋ということになります。大豆が良く煮えていれば粒が残らない良い煮つぶし大豆になるのでお勧めです。「食べ物を足で踏むのはちょっと・・」という場合は手で押しつぶすことになりますが、足で踏むよりたいへんで、うまくペースト状にしにくいです。ヨーロッパでの伝統的なワイン作りにおいて、足で葡萄を踏み潰していたテレビ番組を観たことがありますが、それを考えれば同じ発酵食品、少しは気が楽になるかと思います。 また、講習時間が短く、教える相手が大人、特にご年配が多い場合などは事前に主催者が潰しておいた方が、参加者としてはありがたいかもしれません。その場合は電動ミンチ機が便利でしょう。弊社では使ったことがなく詳しい性能はわかりませんが、最近1万円~2万円台で生大豆で計算上10kg~20kg/1時間(煮後重量20kg~40kg/1時間)潰せる機械もネットで売っているようです。(ちなみに弊社では、豆ミンサーという当時6万円位したものを使っています。10年以上使っても壊れない丈夫な機械ですが、高いのがネック。処理能力1時間で煮大豆25kg程度)、時間が長く取れる場合は、受講者にこの機械でリアルタイムに潰してもらっても良いかと思います。かたづけも簡単で、教室を実施するなら必携かもしれません。
(前回の補足)
前回、「大豆を煮る道具」において「大豆の前日準備ということが煮大豆は基本的にできないため、教室開始時間をそれ(=大豆の煮あがり時刻)に合わせることになるかと思います。」と書きました。実は前煮をしたことがなく、確かめるために失敗覚悟で実験してみたところ、食味検査では悪くなってませんでしたのでその時の事をご報告します。(※生菌検査までは行っておりません。) その時気を付けたこと。
- ①煮あがったらすぐ流水で十分冷やし、水温まで煮大豆の温度を下げる。特に大豆の表面は冷えていても中心に熱が残らない様、くれぐれも十分に冷やす。
- ②ビニール袋等に入れ冷蔵庫に入れる際、一袋に大量に入れるのではなく、例えば一人分づつ明日の計量も兼ね小分けして入れる。万一ビニールの中心に熱がこもり、悪くなることを防ぐ。
- ③大量に入れた場合の冷蔵庫内の温度上昇に注意!事前に冷蔵庫内温度を下げておくなどの対策が必要かも。今回の実験は弊社の大型冷蔵室(7℃)で実施しています。
更に、配合予定量の塩、または全部を事前になるべく均一にまぶしておくと更に安全性が高まるかと思います。 しかしこれはどうしてもやむを得ない場合で、冷蔵庫の容量の制約もあります。基本は当日煮て、冷却後すぐ仕込むに越したことはありません。教室実施予定が年中行事等で決まっているのであれば、3ヶ月くらい前に前日煮の練習を兼ねて、味噌を仕込んで熟成後の味噌の状態をみることをお勧めします。
(第11回)味噌作りを教えてみよう(3)道具その3・まぜる道具
給食施設等設備がない普通の家庭で味噌作りを教える場合、道具は何をそろえればよいのでしょうか。 「大豆を煮る」「大豆を潰す」道具に続いて今回は「まぜる」道具を考えてみましょう。ほぼタダなのは、テーブルの上に大きなビニール袋を裂いてテープ等で固定して混ぜる方法。厚手のビニール製テーブルクロスなら滑りにくく作業がしやすいかもしれません。混ぜやすさについては弊社配合の場合の麦味噌や合わせ味噌のように、まぜるときに柔らかい味噌は良いですが、米味噌のようにまとまりにくい味噌の場合は材料がバラけて、混ぜにくいのが難点です。しかし収納スペースが必要ないのは大きな利点です。 次に100均にあるプラのたらい(直径41cm×高さ15cm) これは100円でも丈夫でおすすめです。5kg分の味噌を一発で混ぜることができます。弊社の出張味噌教室で使用してます。出張の場合、ステンレスボールは重くて移動がたいへんなので、非常に重宝してます。5年使ってもヒビひとつ入りません。しかしたらいの宿命である”角”があるため、その部分が混ざりにくいという難点があります。小学生に教えるときはその点を注意して混ぜてもらいます。 最後にステンレスボール。重くて安定性があり混ぜやすさではこれが一番です。一回混ぜるごとにボール自体をくるっと4分の1回転させながら混ぜると、ムラなく混ぜることができます。しかし、価格は高いです。教室を実施するとなると数個必要になると思いますので厳しいかもしれません。またどうせ買うなら直径48cm×高さ17cm位の大きめのものが作業はしやすいですが、収納する場所が問題となります。
(第12回) 味噌作りを教えてみよう(3)講習の実際(1)最初の話
では、実際に講習の進め方をみてみましょう。オーソドックスな講習の流れとしては、
- ①導入・最初の話
- ②仕込中の指導
- ③熟成の注意事項・終わりの話+
- ④おまけ講座
という感じでしょうか。いきなり仕込作業で作業後ボリュームのある話でもいいですし、これは人それぞれで、自分に合ったスタイルでいいかと思います。また仕込終了後、④で味噌汁の試飲や塩麹の作り方などオマケ講座をするのも喜ばれます。 今回は①導入・最初の話についてお話しします。 手を洗ってもらい、エプロンの着衣等作業準備ができたらいよいよ講座開始です。全体の作業手順を簡単に説明します。
- ①麹と塩の計量
- ②麹と塩を混ぜる
- ③煮つぶし大豆と大豆煮汁の計量
- ④本混ぜ
- ⑤味噌団子作り
- ⑥仕込容器詰め
作業手順も、これに大豆をつぶす体験を加える場合や計量は事前にして配るだけの場合など、時間や教える相手によっていろいろなケースがあります。最初に作業手順をおおまかに知らせておくとスムーズに講習が進行します。 さて手順説明が終わったら、ちょっとだけ話をしてみましょう。参加者のモチベーションが上がります。話のヒントとして・・・。
自分が思う手作り味噌のいいところ
はじめたばかりの頃には、何を話したらいいか戸惑うかもしれませんが、そんなときには、自分が思う手作り味噌のいいところの話し ます。どっかからか仕入れたうんちく話でなく、自分の実感を話せるのでしっかりと相手に伝わります。「熟成度を自分好みにできる 」とか「おいしくてみんなに持っていかれるので自分の分がなくなるのよねー」とかそれぞれの個性で伝えることができます。
今日の材料の話
今から使う材料の話から入るのもいいかもしれません。参加者も知りたがっていることなので原料の産地や品種を話すだけでも安心感 を与えます。そのうえで材料計量後に、麹の香り、大豆の香りを体験してもらいます。特に子どもに教える時。今まで嗅いだことのない臭いを嗅ぐというリアルな体験は貴重です。これは実際に経験した話しですが、小学校に教えに行ったとき、煮た大豆を「臭い」といった子どもがいました。煮大豆は特に悪い臭いとは思わないのですが、子どもにとって臭ったことがないものは「臭い」という表現になる場合があります。これは素通りしちゃいかんと思い、以降こちらから積極的に「臭ってみてー」と呼び掛けることで、「えー、こんな臭いがするんだ~。」という経験表現に変わります。
味噌作りのうんちく話
慣れるまでは「味噌は体に良いから毎日たべましょう」とか一般的な話しでも構いませんが、せっかくの「手づくり」体験ですので、 それを重視した内容の方が良いかと思います。また「味噌の歴史」や「発酵とは」などの話でも自分の腑に落ちるものはバリエーショ ンとしてもっておいた方がよいでしょう。 例えば以前お話した「一焚き、二麹、三仕込」の話。~大豆の煮方が味噌造りで最も大事。これなどは味噌を長年仕込んでいると実感 できる古くからの格言です。一方酒造りでは「一麹、二?、三造り」と麹の出来が最も重要などと話を広げることができます。
基本的な味噌の作り方の話
子どもに話をするとき、「味噌の材料は麹と大豆と塩」のようなごく基本的な話から始めたければ、下記をご参照ください。
次回は「仕込中の指導の実際」についてお話しします。
(第12回) 味噌作りを教えてみよう(3)講習の実際(2)仕込中の指導
前回につづき講習の実際の二回目として仕込中の指導についてお話します。
計量作業
まず参加者に材料の計量をしてもらいます。講師が事前に計量すれば計量ミス等の間違いはありませんが、参加者の”手作りした感”と講師の手間を考えると、参加者に量ってもらった方が良いかと思います。 しかしその場合、計量ミスには特に目を光らせてください。配合ミスは致命的で、例えば塩の入れ忘れなど、後に復旧の仕様がない事も多く細心の注意が必要です。 また、混ぜるときになって「わたし計量まちがったかも」と不安になる方が必ずいます。その場合、混ぜるボウルの重量を予め知っておくと、「材料の合計重量+ボウルの重量」で講師が計量確認して、間違いないことを目の前で確認させてください。 これから長い熟成期間を「間違ったかも」の不安の中で過ごすことを避けることができます。 計量は一気に全材料(麹、塩、煮大豆、煮汁)を計量させたほうが、材料の入れ忘れは防げますが、ボウルや計量カップの数やスペースに制約がある場合、先に麹と塩、後で煮汁と煮大豆と計量を2回に分けます。
混ぜる時の指導
麹と塩を軽く混ぜたら、煮大豆と大豆の煮汁を計量後、全ての材料を本混ぜしますが、ここでどの程度混ぜるかは人それぞれに個性があり、指導が難しいところです。 放っておけば1時間でも混ぜそうな勢いの人もいれば、底に麹の粒がまだ残っているのにやめてしまう人もいます。 (今回詳細は割愛しますが、混ぜ不足はもちろんですが、混ぜすぎもいわゆる”しゃもじ離れ”が悪い、べとついた味噌になるなど技術的にはよくありません。) そこで講座の時間的な制約上、混ぜる回数を具体的に「60回(子どもは100回!)、下からすくってひっくりかせすようにまぜましょうー」などと指導するのが良いかと思います。 特にパンづくりをしている方は同じ感覚で「粘りを出すまで混ぜなきゃいけない」と思い込んでるケースが多々あります。 味噌はムラなく混ぜることが主目的であり、粘らせるため混ぜるのではない旨を指導することが大切です。また力のない、老人ホームなどのお年寄りにはアシスト、子供はちゃんと混ざってるかを確認するのは当然の事です。 味噌団子作り~熟成容器に詰める 味噌団子を全部作ってから熟成容器につめるのと、1個作る毎に入れるのでは後者の方がなぜか断然作業時間が短くなります。 そこを利用して講習時間を調整するとよいでしょう。団子作り時は小学生の女の子には「ハンバーグつくったことある?」、男の子には「泥団子作る要領で」などと楽しいコミュニケーションを図ってみてはいかがでしょう。
(第13回)味噌作りを教えてみよう(3)講習の実際(3)終わりの話と「おまけ講座」
(終わりの話)
全ての作業が終了したら、持ち帰った後の熟成場所やカビが出た場合の対処法など熟成方法に関する注意点を一通り説明します。特に熟成場所については、何も言わないと大体、キッチンの隅っことか、床下収納とかに放置されてカビがはえることになるので、「必ず目の届くところ、手の届くところに置きましょう。そのうちかわいくなって毎日触ることになります。」子どもには「名前付けてね、毎日かわいがってね」などとユーモアを交えて説明してます。実際毎日触っていると水分が均一化され熟成は進み、カビは生えにくくなるようです。 また、この時間は質問を受けたり、なるべく個別に会話する双方向の時間にすることが大切です。技術的な質問以外でも、例えば本当かどうか不明ですが「10月に仕込むと同じ1年熟成でも色が変わりにくいから(九州はなぜか濃い色の味噌が嫌われます。)10月しか仕込まない」というお客さんの説を傾聴したり、夏休みの自由研究用に仕込みに来た来た子供には、研究のポイントを教えたり、またいろんな味噌を使ったレシピを逆に教えてもらうこともあります。例えば最近聞いた「梅味噌」。そのお客さんは梅の時期から逆算した時期に必ず仕込に来られます。味噌に新梅をつけて酢味噌のようなものを作るのだそうです。作業後は単に教える、教えられるの立場を越えて仲良くなれる貴重な時間だと思います。
(おまけ講座)
味噌作りが終わった後、麹や味噌や発酵に関するおまけ講座をすると教室の魅力がアップします。オーソドックスで経費も時間もかからないものとしては、味噌の種類別(麦味噌、米味噌、合わせ味噌等)食べ比べは、初めて食べたという方も多く、意外とうけます。準備が必要となりますが、甘酒や味噌を使ったお菓子や食品をお茶うけにしての茶話形式で作り方は教えるだけでも十分喜ばれます。ワンコイン程度の追加料金で、実際に作り、持ち帰ってもらう実習を伴う講座としてはやはり塩麹がお勧めです。麹の使用量も少なく、たくさんできるので意外と経費がかかりません。(持ち帰りのビン等容器は各自準備してもらうことになります。)その他、前述の「梅味噌」のように旬の食材と味噌や麹を絡めた食品、料理を教えることも、受講する季節ごとに変化があり、一年を通してのリピート受講につながります。




